【大学入試】ー2019年私立大一般入試「世界恐慌の行方」ー

そいる塾長
そいる塾長

どうも、そいる塾長です。

今回の記事は2017年2月に”前のブログ”で書いた記事を再編集。”前のブログ”で一番多くの人に読んでもらった記事(2万PVくらい)。もう今更ニーズはないかもしれませんが思い出深い記事なので受験シーズン本格化するこの時期に「その後」の動きを含めて再編集しております。特に最近発表された超過ペナルティ見送り措置の影響についても後半言及しているので参考にしていただければ幸いです。

2017年2月、私立大一般入試にて「世界恐慌」が始まる

2017年2月のこと。

頑張り屋さんが多かった2017年度入試組の当時の教え子である高3生。

「出来ない子を難関大に」という私が塾長を務める某個別指導塾の精神そのままに、京都でも今や底辺公立校となった某高校の生徒が、努力を続けていた。(某だらけでごめんなさい)

成績は伸びに伸び、英語も政経も高校では学年トップクラス。

苦手な国語も安定してきており、模試ではA判定。もちろん過去問の出来もよく、わたしが直接指導している感覚でも「立命館大学に合格できる」という感覚が持てる所まで来ていた。

 

そして迎えた二月の合格発表

2月14日のバレンタインデー。私は第2子が生まれ幸せの絶頂にいた。

そして高3生の合格の報告を聞き、幸せに包まれる…はずだった。

ところが…

まさかの不合格。

入試後私が採点し、得点調整も考慮した上で合格は間違いないと判断した。

それでも届かなかった。政経の予想外の大幅な得点調整も響いたのは確かにある。近年稀に見る易化。例年はあまり得点調整が話題にならない立命館。しかしこのときはたしかに入試後掲示板がざわついていました。

 

そういえばその掲示板で私が書いたこの記事の元のURLがやたらと貼り付けられており、たくさんアクセス頂いておりました。確か立命館・龍谷・京産大の掲示板で貼られてました。でも今はもうリンク先がないという…。申し訳ないですm(_ _)m

しかしその後驚くべき数字を目にすることとなる。

立命館は合格者を3841人も減らしていた。前年比12%減。

この生徒は、特にその傾向が顕著であるにも関わらず志願者が急増した学部・学科一本で受験してしまった。

その合格者数と、とんでもない実質倍率を目にした生徒は戦意を喪失、後期入試を待たず龍谷大学への入学を決めた。

この年、塾内でも立命館に合格できたのはほとんどがもう一つ上のランクの大学を目指していた子たちばかり。

これが全ての始まりだったのです…。

 

2017年度私立大が合格者人数を絞り始める

物語調はこの辺にして本題へ。

まずは2017年の入試結果を見てみましょう。

私大志願者数に大きな動き合格者数抑制で文系浪人増に
志願者数が大きく増加する一方で、人気上位校を中心に合格者数は大きく減少した私立大学入試。来年は大幅に募集定員を増やす学校もある。私立大学の現状を見てみよう。
上記サイトで2017年の私大入試が詳しく分析されています。これによると

早慶上理(早稲田、慶應義塾、上智、東京理科)を合計すると1841人減、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)で6893人減だ。早慶上理とMARCHを合わせると8734人減で、ほぼ慶應義塾大の合格者数に匹敵する。1大学分の合格者が減った計算になる。関西でも関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)で7090人の合格者減である。

こちら↓は東進さんのサイトから

2017年度、すでに関東では有名難関私大1大学分の合格者が減らされていたということです。

関西でも同じですが、やはり立命館が一大学で4000人弱の削減はとんでもない異常事態だといえるのが理解していただけるでしょうか?

もちろん昨年の反省をいかし、昨年度はそれを踏まえた上で大学指導を行いました。

立命館受験者が多く、とてもショッキングな状況を目の当たりにしたからこそ危機感を余計に強く感じていました。

おかげさまで昨年の生徒同様京都で同じく底辺公立高校などと呼ばれるような高校の生徒を今年度は無事第1志望の立命館大学に合格させることが出来き、リベンジを果たすことができました。

めでたしめでたし。

…。

と言いたいところですが、そんな簡単なことではありません。

私たちは昨年、立命館の合格者数大幅削減に驚かされていたとき、まだ気付いていなかったんです…。(本当はわかっていましたけどね…笑)

そこで不合格になった生徒はどこへ行ったのか…。

本当に恐ろしい状況が訪れるのはそう・・・

今年。2018年だったのです。

 

2018年度入試。本当の「恐慌」が始まった。

2018年の私大一般入試とその合格発表後の阿鼻叫喚。凄まじかった。

結果はこんな感じになりました。

※AERA2018年4月23日号より引用

主な関西圏の大学のみをまとめると

立命館は3247人減
同志社は960人減
関西大が2036人減
関学が2460人減
龍谷大は380人減
京都産業大は2346人減
近畿大は1527人減

結論からいうと世界恐慌は更に進行ということですね。

関関同立はもちろん、産近甲龍、はたまた佛教大まで合格者を絞りまくっております。

先程の彼が今回立命館全5日の日程にチャレンジし、合格したのは3日。これは割と普通。ギリギリという気はしません。得点開示を見ても10点~20点以上をとっていました。

さらに3000人規模で合格者が減らされた立命館。この状況で本当によく頑張ったと思います。校内で一般入試合格者は自分を含めほんの数人とのこと。

しかし問題は滑り止めで受験した京産大。彼は公募で京産大にあと1点で落ちており、一般入試で再チャレンジし無事合格したわけですがその得点を見てみると、一日目は何と合格最低点から+0.2

得点が小数なのは得点調整を受けるから。これから受験する皆さんは間違っても過去問で採点したまんまの素点(生点)で各大学の合格最低点と比較しないように。日程間と科目間でほぼ必ず得点調整が行われます。このあたりもしっかり理解しておきましょうね。

この生徒は元々異常なほど京産大と相性が悪かったと言うのはあります(笑)

京産大に落ちて立命に通るかもねと周りから冗談を言われるほどでしたが、しかしそれでもここまで京産大で苦戦するとは思いませんでした。まず公募で届かないなんてことはないであろうと思っていました。

それほど京産大の入試が難しくなっていた。その原因が2346人減ということですね。

附属校の特進コース(難関大外部受験コース)の生徒が京産大で数多く不合格となっているような状況。

しかし驚かされたのは佛教大学

佛大は公募ではまだ気にならない程度の絞り方(体感ですが)だったのですが、一般入試A日程で本気出しました。

志願者大幅増(約188名増)の社会学部公共政策で合格者を188⇒72という絞りっぷり。

合格者実質倍率は2.6倍⇒10倍。

公募で京産・龍谷・近畿あたりを確保できなかった層と、公募を回避したチャレンジャーたちが慌てて佛大に出願し、見事にぶっこけている可能性があります。

下へ下へと玉突き事故のような状態となっていると言えるでしょうね。

時間がなくて全て調べてはいませんが、もはや名のある大学は全て難化、そしてそれに伴い下位校も難化したのは間違いないですね。

これは都市圏と地方の大学でも顕著。同じような玉突きが起きていると言えます。これまで定員割れギリギリだったような大学、特に地方の大学がの定員充足率が順調に回復しております。

出典:日本経済新聞

追加合格の嵐

そして今年の3月。これまでに見られなかった現象が。それが追加合格の嵐です。

合格者を絞りまくった結果、入学者が足りなくなるわけです。つまり合格した併願受験生に蹴られまくった結果想定した入学者が確保できなかった。

そして追加合格によって他大学に学生を奪われた大学がまた定員割れとなって、さらに追加合格を出すというわけのわからない連鎖が発生。

だから3月や4月に追加合格がくるわけです。すでに他の大学に入学手続きをすませ、人によっては一人暮らしの準備を始めた頃の追加合格。たまったもんじゃない。大学側も学生側もだーれも喜ばないこの仕組(笑)

なんとも言えない気持ちになりますね。

何より大人の都合に振り回される受験生が不憫でなりません。ある意味では大学も被害者です。

さて悪いのはだ~れだ?

 

2019年入試の見通し

さて、ではどうなる2019年入試!ということですが、まず注目すべきはこちらの記事。

私大の入学定員、超過ペナルティ措置は見送り…文科省 | リセマム
文部科学省は平成30年9月11日付で、日本私立学校振興・共済事業団理事長に宛て、平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱いについて通知を出した。入学定員充足率が1.0倍を超えた際に...

さすがに批判が強かったからか、緩和策を打ち出してきましたね。

笑えません。

ただし私はこれにより簡単に”緩和”されるとは思えません。

結論から言うと2019年入試は易化することはないのではないかという見解です。

入学定員充足率が100%を超える場合に超過入学者数に応じて私学助成を減額するペナルティ措置は緩和されましたが、入学定員充足率が95~100%の場合に増額するインセンティブ措置の実施は変わらず。

ただしここが注意です。

110%以上の超過は補助金0というのは変わっていませんので結局2018年入試と何も変わりません。

つまり緩和というのはさらに厳しくすることはないよという意味であって別に何も緩くなってはいませんよということ。

それに何よりインセンティブが残っちゃった(笑)

このインセンティブが残された以上私大はこの定員率を目指して動く可能性は否定できません。

だって定員割れたらお金もらえるんですよ(笑)意味がわからんなと思うのですが(^_^;)

さらに何より2018年入試の結果大量に生み出された不合格者がどこへ行ったのかという問題があります。

これが2019年入試が2018年入試よりも難化するのではと恐れる最大の理由。

 

 

浪人・仮面浪人生激増の影響

今年の春、予備校はかつての栄華を取り戻したかのようだと色々な先生がツイートしていらっしゃいました。

警備員が誘導しなければエレベーターにも乗れず、教室に先生が入れないような状況。まさに予備校バブル(笑)

しかもその殆どが私大クラス。彼ら全員が今年の現役受験生最大のライバルとなります。

しかも仮面浪人生も万の単位で潜伏しているなどとまことしやかに囁かれています。

どうしても不合格者数ばかりに目が行きますが、実際彼ら全員が不合格のまま受験を終えたのではありません。確かになかには本当に全滅といった子もいました。いやかなり多くそんな話を耳にしました。

しかしなかには不本意ながら第2志望、第3志望の学校に”いやいや”入学した子たちもまたたくさんいたということです。

彼らの中には「例年通りだったら第一志望に合格できたのに」という思いが強い。だからこそ大学に一旦入学し、来年再チャレンジをする子たちが多く潜伏しているのです。そう、今も大学の授業を受けずひたすら大学の図書室で受験勉強に明け暮れる”大学生”がたくさんいるのです。

彼らもまた今年の受験に参戦してきます。となるとこの緩和で万が一大学側が倍率を110%以上といった数年前の基準に戻したところで競争率はそのとき以上のものとなるのは間違いありません。

さらにこの難化のイメージを刷り込まれた受験生、保護者、我々進路指導に携わるものは皆危機感を持っています。特に浪人生は後がない。

となると滑り止めとして安全圏を下げ受験させることに。つまり今まで以上に下位校の枠が上位校併願者が食い荒らす可能性もあります。

つまりは人気校は例年よりも志願者自体が増えてくるのではないかということです。

 

合格者を絞ることになったそもそもの原因とは

※ここから下の内容はもうみなさんこのへんはご存知かと思いますが一応残しておきます。少し手直しはしましたがあくまで2月の時点の予測で書いたところが多いので上と被る部分が多いかもしれません。予めご了承下さい。

 

原因は大学のアカデミックなところとは全く無関係な大人の事情です。

補助金(助成金)

そもそもの問題の発端となったのが政府の補助金(助成金)の削減宣言

以下の旺文社さんの資料で分かりやすくまとめてあるので引用させて頂きました。

旺文社 教育情報センター より引用

嫌ですね。結局お金です(笑)

文部科学省は来年度から定員を上回る学生を入学させているマンモス私立大学に対して、補助金の交付額を削減することを決めた。
具体的には、定員数8000人以上の大規模私大の場合、定員の1割を上回る学生を入学させると、大学の補助金を全額カットするというものだ。従来は2割以上であっただけに、基準が大きく引き下げられることになる。来年度から段階的に引き下げられ、2018年度には1割ルールを適用するという。
『受験生に