どうも、そいる塾長です。
オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題: 「あなたは自分を利口だと思いますか?」
こちらの著書は河出書房から。河出書房と言えばこないだ(だいぶ前ですが…)「夜の巷を徘徊する」でマツコデラックスさんが新社ビルを訪れていましたね。まあ、どうでもいいんですが、出版社さんの中がみれて面白かったです。仕事終わりにTVつけてるとついつい見てしまう。「夜の巷」感が好き。
ちなみに本屋さんで気になっていたこちら↓も河出書房さんなんですね。
妙に物欲をそそられる。まあ、私はやらないんですがね(笑)
あ、私はまだ読んでませんが今年の春にこんなのも出たようです。
読書感想文
スーパーエリート校の入試問題。あなたならどう答える? 難問奇問を選りすぐり、解答例をつけた考える楽しさを知る1冊!イギリス流の、ほんとうの賢さとは何か?世界トップ10に入る両校の入試問題ではこんな超絶な思考実験が行われている!さあ、あなたならどう答える?どうしたら合格できる?難問奇問を選りすぐり、ユーモアあふれる解答例をつけたユニークな1冊。
内容(「BOOK」データベースより)
ということでオックスフォードとケンブリッジ(略してオックスブリッジ)という2大世界的名門大学の入試問題(面接での質問)全60問に超絶”かしこ”のジョン・ファーンドン氏が解答(らしきもの)を示すという形式。
今回この本を生徒の皆さんに紹介するのはただひたすらに「考える」ってすげーぞ!おもしれーぞ!ってことを伝えたいその一心です。
てことで全60問の中からいくつか面白かったものをご紹介しておきます。
なかには私が以前から知っていたような有名なものも多く掲載されているのですが、生徒に読んでもらいたい、考えてもらいたいもの基準で選びました。
カッコ内は出題した学部です。
その学部を表しているかどうか、また著者の解答がその学部を示すものかどうかは別にして学部を考えるきっかけにしても面白いかもしれません。
あくまで学部がどういう思考を求めているか、という視点ですが。
- 2.蟻を落とすとどうなりますか?(物理学)
- 3. もし全能の神がいるとしたら、彼は自身が持ち上げられない石を造ることは可能でしょうか?(古典学)
- 7.自分の腎臓を売ってもよいでしょうか?(医学)
- 16. もし地面を地球の裏側まで掘って、その穴に飛び込んだらどうなりますか?(工学)
- 19. スミスはジョウンズが絶望に向かって歩いているのを見ている。スミスはジョウンズが盲目であることを知っているが、彼のことが好きではないので崖から落ちるに任せている。これは殺人でしょうか?(法学)
- 22. あなたならリンゴをどう説明しますか?(社会学・政治学)
- 35. 牛一頭には世界中の水の何パーセントが含まれていますか?(獣医学)
- 48. どうしたら建築で犯罪を減らせるでしょうか?(建築学)
- 59. イギリス国内の貧困と海外の貧困のどちらに注目する方が重要でしょうか?(土地経済学)
他にも面白い問題はたくさんあるんですがめんどくさいので端折りますね(笑)
さて、本の中身ですが予想通りなので特にうおーって言うことはなかったです(笑)
そもそも正解がないような問に対して一つ、ときにはいくつかの視点から切り込み、考え方の指針のようなものを示すものであって、読後の「もやもや感」は拭えないでしょう。
ときに新学習指導要領でアクティブラーニングが云々言われているわけですが、答えがない以上このもやもや感は仕方がないわけです。それをどうやって学校の先生が消化させるか見ものです。大変だろな・・・。
アクティブラーニングについて私見
アクティブラーニングでよく言われるのは「答えのない課題について考える」ということですがなんかおかしな文脈で使われているのを見かけます。
それが「答えは出なくても仕方がない」というものなんですが、それ何の遊び?と思うんです。
答えは出さないと。模範解答が用意されていないだけで何かしら答えをひねり出すところまでいかないとほんと子どものお遊戯で終わりますよね。
今回はジョン・ファーンドン氏がこれらの問題に応えていくわけですが、明確に論拠をもって自分の解答を述べています。それが正しいかどうかは別にして、答えを自分で生み出しているわけです。
この入試で「答えはありません!」では合格しないということです。
ここまでいかないと話になりませんし、ここからやっと「協働性」とかいう目的の議論が始まるのではと思うのですよね。
だから答えが用意されていないだけであって答えが出ないのとは違うよなと。そしてそのためには答えが用意されているものを、答えを教えてもらうことなく自分で導き出していく勉強ってとっても大切なんじゃないかなと。
アクティブラーニングのお手本に
そういう意味ではこの本はアクティブラーニングのお手本になるかなと。
もちろんここで問われている問題はアクティブラーニングにぴったりの「答えがない」問題。
それに対し自分なりの答えを生み出していく所作が見て取れます。
それに様々な学部の問題に応えるので当然ながら、今盛んに日本の入試でも導入が叫ばれている「科目横断型」の知識とその運用と言いましょうか、物理学から哲学まで幅広く深い教養をもった筆者だからこその解答が満載です。
そして気が付きます。答えのない解答を生むために必要なのは圧倒的な知識量とその運用能力。私がいつも書いている言葉で言うならインプットとアウトプット。
情報の運用能力を今っぽい言葉で言うなら情報編集力でしょうか。上辺だけでなくしっかり深いレベルまで理解しているからこそなせる業。
海外のトップレベルの大学の入試とはいえこの人ほどの解答を示すことができる学生がどれほどいるのかはわかりませんが、それでもそういった大学はこのレベルを求めているということでしょう。
果たして今始まっている高校のアクティブラーニングはそんなレベルに到達するのでしょうか。
高校で初めての物理の授業でアクティブラーニングを行い初日にして物理難民を何人も生み出したあげくテストは普通の問題が出てくる高校を目にするあたり、おままごとにしか見えないのですが大丈夫でしょうか?
閑話休題
アクティブラーニングのお話は置いておいてこの本のお話に話を戻すと、そうは言ってもこの本の形式が、一つの問に対して著者の考え(解答例)がずら~っと書かれていて、それを読んでいくだけのスタイルなので思考実験系の本としてはいまいちかなと^^;
考えさせられているというよりは読まされている感があったなと。
60問収録というのも多すぎて、一つ一つでの思考が、思考実験というには物足りない感じも否めません。
間違っても「私ならもっとすごいこと答えるぞ」みたいなことを言いたいわけではなく、もう少し私のような凡人と一緒に考えていってくれるゲームのようなスタイルを望んでいたんです。
それこそアクティブラーニングさせてくれるように。なかなか一問一問じっくり考えることが出来なかった感があります。急いで読んだ私が悪いだけという説もありますが。
つまりはただ読むだけではアクティブラーニングにはならないということです(笑)答えが用意されてしまっているので。
つまり収録されている問題と著者の解答に不満があるわけでもなく、その記述形式がちょっと…というだけです。
まあ、本屋で立ち読みして感じていたのでそれを良しとして購入したわけで文句はありません。
その証拠に私は、同じ思考実験系でもっと遊ばせてくれるようなスタイルの本を同時購入するという画期的手法(大人買い)を使っていました。あっはっは。
それがこちら↓
こういう本は自分が楽しむためでもあるんですが、やはり職業柄生徒と一緒にワイワイ言いながら思考実験的なお遊びがしたいのでそのネタのためというのが大きいんです。
受験前でもない、定期テスト前でもない、そんな週末にでもカフェタイムと称して1時間くらいこういう遊びがしてみたいなと。
こちらはAmazonでのレビューはいまいちですが、子供たちには面白いんじゃないでしょうか?
私は結構楽しく読んでいます。
上の作品とは違い、哲学系から数学、はたまた就職試験に出そうなものが合計33個ラインナップされており、解答があるものとないもの両方があるものの、なんらかの結論は与えてくれるので子供たちには取り組みやすいかと。
また図式化されていいるので理解もしやすいし説明もしやすいですね。
まだ半分までしか読んでいないので、こちらはネクスト暇つぶし本として読むつもりです。
また紹介するかもしれないししないかもしれない。
話を戻して、今回ご紹介する「世界一~」の方も、生徒に話すネタとして60問もあるのは助かりますし、博識な著者なので様々な角度から問題を捉えており勉強になる。
知識をひけらかしているだけなんて見方もあるようですが、やはり思考は知識を前提としているということを思い知らされます。
知識は思考を妨げるなんていう考え方もあるようですが、それは知っているから考える必要はないという単純な思い込みを言うのであって、知識が到達点になってしまっている場合ですよね。いわゆる丸暗記でテストの点数を取れれば良いとするような発想です。
数学、物理学、化学、生物学、法学、哲学、経済学、歴史学、文学、なんだって良いのですが知識が全くなければそこを思考の出発点にすることなど出来ないでしょう。
考えることを大切にしてほしい
「あなたならりんごをどう説明しますか?」
たしかにどうでも良いんですがね。
でもね、たまにいるんですよ「え~、りんご~、なんだろ~、赤くて~、甘くて…いやちょっと酸味が…」って考えはじめる子が。
その答えがオックスブリッジの入試で合格点をもらえるかどうかは別にして、この子はこれまでも、これからも考えることを大事に、いや自然と色んなことを考えて行きていくんだろうなと。
勉強においてはもちろん、人生においても「考える」ということの意味は大きい。
哲学者ではないので、生きることについてはここで述べるのは遠慮しておきますが、勉強について考える意味は言うまでもない。
勉強は暗記ではない。知識を出発点に考える事である。
オックスブリッジのような問題がこれから日本の入試で出題されるかどうかはわかりませんが、入試で出題されようがされまいが最も身につけるべきものは「考える力」
考えることを楽しめるかどうかで、勉強が変わります。もちろん成績も良くなりますが、なにより「勉強なんて意味がない」というのが如何に愚かな妄言かわかります。
勉強をなぜするのか親に訊いたときに、コップを指して「国語なら『透明なコップに入った濁ったお茶』、算数なら『200mlのコップに半分以下残っているお茶』、社会なら『中国産のコップに入った静岡産のお茶』と色々な視点が持てる。多様な視点や価値観は心を自由にする」というようなことを返された
今はもう見れないようですがだいぶ前に話題になったツイート。
ここに集約されていると思います。
なぜ勉強するのか。知識とは何か。そしてなぜ考えなければいけないのか。
今見えている世界が変わる。
やってみないとわからないですが変わるんです。私のようなものですら生徒の皆さんとは同じものを見ても違った世界を見ていると思います。
そしてこの本を読んで、いやどんな本を読んでも自分が見えていなかった世界が少し見えるようになるかもしれませんね。
今日はこのへんで。