
どうも、そいる塾長です。
2018年度のセンター国語は簡単でしたね。特に第2問はオーソドックスで解きやすかった印象。
問題自体はこれまでと特に変化なくしっかり物語文の解き方を理解していれば特に問題はなかったでしょう。
文章の方もリード文でしっかり登場人物の背景に触れていますし、時代設定、舞台設定ともに高校生にとってもとっつきやいほうだったかなと。
読書感想文
Amazon内容紹介より
「コロッケ」「キャベツ炒め」「豆ごはん」「鯵フライ」「白菜とリンゴとチーズと胡桃のサラダ」「ひじき煮」「茸の混ぜごはん」・・・・・・東京の私鉄沿線のささやかな商店街にある「ここ家」のお惣菜は、とびっきり美味しい。にぎやかなオーナーの江子にむっつりの麻津子と内省的な郁子、大人の事情をたっぷり抱えた3人で切り盛りしている。彼女たちの愛しい人生を、幸福な記憶を、切ない想いを、季節の食べ物とともに描いた話題作、遂に文庫化。
井上荒野さんの作品を読むのは今回で2作目。
最初に読んだのはこちら。
今回この本を紹介するのはやめておきますが、この本を読んで作者の飾らないのにどこか温かみのある文体がすごく気に入ってたんですよね。
もちろん描かれているのは私の大好きなどこにでもある日常。そして何より中学生も登場するんでね。登場の仕方がいいのか悪いのかは知りませんが笑
なのでセンターで出典になったのは嬉しかったのですが、この「キャベツ炒めに捧ぐ」はセンター試験の出典でなければまず手に取ることはなかっただろうと思います(笑)
理由はタイトル。絶対料理メインな作品ですよね…。私はなんせ料理に興味がない(笑)
「不恰好な朝の馬」はタイトル見て買わずにはいられなかったんですが、『キャベツ炒めて…何捧げんねん…』ていうのがタイトル見た第1印象(笑)
何と言っても私は10年にわたる一人暮らし生活で料理をしたことなんて数える程しかない超料理下手。苦手なんですよ…。どうやっても美味しく作れない。もうこれは生まれ持った才能と諦めているくらいです。
それに登場人物がアラ還のオバチャン3人ときた…。
よくセンター現代文の指導を始めたての女子高生が、おっさんが主人公の作品読んで(解いて)は「オッサンの気持ちなんか知らんがな!」って怒るんですが、ちょっとその気持ちはわかるんですよね^^;
やっぱり感情移入しやすい登場人物って誰だっているわけで、私にとって最大の強敵はオバチャンです。オバちゃんと行っても40代くらいなら年も近いし無問題ですが、60歳はちょっと…と怖気づいてしまいました。
そんなオバちゃんたちが永遠料理するお話だったらどうしよう…、でもセンター試験の出典だしな~、読んでおかなきゃな~ぐらいで、正直言うとあまり読む気にはならなかったんです。
ところがどっこい!
センター試験の問題を解いてみるとどうやら予想とは異なる感じ!
まあ、実際本を読んだあとで考えると、ちょっとあそこだけ抜いてもな~とは思うんですが、やはりそれでも問題解いただけで、その温かくてさっぱりした文体と、ちょっとしたほろ苦さを感じるストーリーで俄然読みたくなってきたわけです。。
これはいいんじゃないか?
そう思って買ってきたわけですが、目次を開いて「あ・・・(・o・)」ってなりました。
全章に「キュウリいろいろ」みたいな料理(食材?)名が…。
ひろうす?桃素麺?なにそれおいしいの?みたいな。
そして読み始めて気付く、舞台は「ここ家」という惣菜屋。
あかんやつや・・・。一瞬後悔…。
でも結果から言うと実際読み始めたら、おもしろくって数時間でその日のうちに読破してしまいましたよ。
出てくる料理自体はまあね・・・、私自身、独身時代には幾度となく惣菜屋さんのお世話になったものの、自分が買ってたのは唐揚げとかばっかりで、今回登場する「ひろうす」とか絶対チョイスしないような料理はやはりそこまで引かれたわけではなかったんです。(未だ「ひろうす」なるものがいかなるものか認識できていない文化レベルの低い私。)
「おいしそー」っていうのはなかったですね。読み始めた時は特に。
しかし肝心の3人の熟年女性の視点から描かれる人間模様、人生模様は実に面白かった。
やはり、本も料理も食わず嫌いはいけませんね。
入試の出典ものを読むことにしたのは読むジャンルを広げるためっていうのもあったので今回はその目的にピッタリの作品になりました。
ただどうしてもこの作品を読んでいてオバちゃんたちの可愛らしさから(時々どぎつい下ネタを放ったりするんですが…)、彼女たちの年齢が60歳前後というのはピンと来なくてどうしても40代後半くらいに脳内変換してしまうんです。
私の中のアラ還の女性となるとこんなイメージなので…。↓↓↓
・・・
・・・
・・・
いや、画像を出すのはよそう。各方面から怒られそうです・・・。
にしても私のイメージはなんかちょっと違うんですよね…。
それもこれも私が世のアラ還の女性がいかなるものかイメージできないのが悪いんだと思い、途中で同年代くらいの女優さんを探してイメージ補正をおこないました。
ということで以下、私が勝手にイメージしたこの物語を実写化した際に3人の登場人物を演じる女優さんです。(妄想)
にぎやかなオーナーの江子
むっつりの麻津子
内省的な郁子
こんな感じで脳内変換(めっちゃ適当)、しかしそうすることで不思議といける(笑)
あ、私は熟女芸人ではありません、悪しからず。この方々は映画やドラマでお顔は存じておりましたがお名前は初めて知りました。
皆さん本当に素敵な女優さんですよね。
この人達なら作品内で何度もでてくるように、少女みたいに「きゃははは」とかって笑っていても自分の中で違和感ない。ちょっとキムラさんが若すぎるか?秋川リサさんの方が適役か?悩む…。
うん、どうでもいい。
豆ごはん
まあ、それは置いておいて、やはり私は井上荒野さんの文章がすごく好きですね。
彼女たちがそれぞれ抱えている寂しさだったり、葛藤のようなものを描いているけど、その文体はすごく「からっと」揚がっていてノンオイルでヘルシーな感じ。(今わたし自分で上手いこと言うてるって思っています笑)
べたべたした表現は決して使わないけど、女性ならではの「言葉通りではない内面」がとても細やかに絶妙なさじ加減でうま~く描かれていますし、テーマの食材で物語をうまく包み込んでいたりと見事に惹きつけられてしまいます。
それに結構暗くなりそうな場面でも、明るく温かい気持ちにうまくもっていってくれて読後は爽やかで前向きな気持ちになれますね。
これが世の60歳の女性かどうかはわかりませんが、またこうして3人の自分とは全く異なる人生を歩んでいる人たちを体験できて良かったなと思える作品でした。
料理には興味のない私でもこの作品の「ふきのとう」のところはすごく共感できてしまって、思わずちょっと涙が出てしまいました。
いや実際私が思い出してしまったのは「豆ごはん」なんですが、「豆ごはん」のお話のところではなんとも思っていなかったんですが、「ふきのとう」のお話のところで、「豆ごはん」を思い出しまして…
えーい、ややこしいわ( `ー´)ノ
私の母親が亡くなった後、実家に帰るたびに母親によく作ってもらっていた「豆ごはん」を祖母が作ってくれるんですね。
私が好きだって言ったのをおぼえていて祖母なりにおふくろの味を私に食べさせてあげたいみたいな気持ちがあったんでしょう。
当時は滅多に実家には帰らないんで、帰ったときには奮発してすき焼きとか焼き肉にしてくれるんですが、そんな時でも豆ご飯。いや、こういう時は白ごはんだろとか思いながら食べてたんですね。
いや、今その話じゃなかった。
真面目に書くと、私もこの「ふきのとう」の話のように、そうやって実家に帰るだけでもしんどかった時期があったんです。そのたびに母親の味を思い出させられるのも結構辛かったんですよね。
一方で祖母の気持ちも痛いほどわかる…。
なんかそんなこともう忘れてたんでこの本を読んで久々に盛大に思い出してしまいました。
こんなこと書いていると会いたくなってしまいます。
料理なんて興味ねーよって思ってたのにちゃんとどっかに残っているもんなんですね。
でもそれは料理や食材自体というよりもきっとそれに包まれているモノ。
忘れてた記憶というかおぼえているけどモノクロだった記憶を料理がカラーで鮮やかに復元してくれる感じとでも言いましょうか、なんかそんな感じです。
料理や食材がテーマっていうのはそういうことなんですかね。(いや、これは私の勝手な「読み」であって入試問題を解く時はこういうの厳禁です!ダメ絶対!笑)
情景描写が国語の授業でも小説読解では重要だったりするわけで、例えばこの章でも登場する「湖」のところでは読者がそれぞれ自分の「湖」を思い描いて読むわけですよ。
でも料理ってもちろんそういう視覚的な要素もあるけど、それ以上に、味や香り、季節感、そしてそれを誰が作ってどんなときに誰と食べたかというように心のもっと深いところに刻まれていくのかもなと思わされました。そういう意味では小説のテーマには面白いんだろうなと。
登場人物の彼女たちの心が揺れ動いたりしたときに関わった料理や食材だからこそこれからも心のどこかに残っていくんでしょうね。
中高生にとっては、アラ還女性の気持ちなんて知ったことじゃないって感じるかもしれませんが、だからこそ体験してみて欲しい作品です。
今当たり前のように食べているお袋の味(親父の味かもしれませんが)があと10年もすれば…。
もちろんお母様方にもオススメかな。特に料理好きな方にはたまらないのでは?
きっとこの作品を読んでお腹が空いてくるような人のほうが感じ取れる部分が多いのかもしれませんからね。
ほんと素敵な作品!おすすめです。
今日はこのへんで。