どうも、そいる塾長です。
前ブログからのセルフリライト記事になります。
教科書からの用語削減に関する動向はこちらからどうぞ。
今回この記事を引っ張り出してきたのは「暗記」という言葉についてちゃんと自分の定義を書いておきたかったから。
私は暗記が嫌いです。ですが暗記を否定しているわけではありません。知識があってこその思考です。暗記は勉強には絶対に必要です。
私が嫌いな暗記は、暗記のための暗記。言うならばテストで聞かれるから暗記するというような何のために暗記しているのかわからない暗記です。そのことをご理解いただくための記事となります。
私が教科書から用語を削減することに反対する理由
最近歴史や生物などのいわゆる暗記科目から用語を削ろうとする動きがあるようです。
細かな用語を丸暗記しても意味はなし。そこは激しく賛同します。暗記が苦手な私としては助かります。
ですが用語を教科書から削ってしまうのはどうなんでしょう?というお話です。(基本的に生物は賛成ですので歴史に関してのお話になっています)
問題なのは、教科書ではなく、細かな知識(年号がまさにそれ)や、教科書にも載っていないような知識をテストで問い合否を決める入試問題(なかには定期テストですらそういう問題がある。)にあると思うんです。
例題
どんな形式だったかは忘れましたがとりあえずルソーの出身地を尋ねてました。
ルソーといえばフランス人。だからパリという解答が多かったようです。ネットの掲示板にはマルセイユって答えている子もいました。
しかし正解はスイスのジュネーブです。これは用語集にも書いてあります。
こう書くと、ほらそんなどうでも良い細かな知識を聞いて!悪問だ!なんて思う人が大半だとおもいます。
しかし私の生徒は正解していました。結局9割超えのちゃんと勉強してた子です。しかしそれでもこの子がこんなマニアックな問題をなんで正解できたか…。それは私が教えたからです(笑)
そこまでガッツリと授業で話をしていたわけではないのですが、過去問演習の授業のときにルソー周りの内容が出てきたのでちらっと触れました。というのが、直前に私がスイスの直接民主制についての番組をテレビで目にしたから。スイスが直接民主制をとるのはスイスのジュネーブ出身のルソーの影響もあるのかもしれませんね的な。
でももしそうじゃないならそれ聞いてどうするんやと思うんですよね。いる?出身地。その辺は出題者の先生の意図を聞いてみたいのです。
もしかしたら私のような不勉強な者にとっては意味のないマニアックな用語でも実はその歴史的背景を理解するためには非常に重要で…みたいなのがあるかもしれませんので。
だからないならやめましょうよ?
これが理系の人にバカにされる一番のポイントやと思います。それ暗記してどないするん?(笑)みたいな。
解いていても指導していても本当につまらないんですよね。やっぱり解いている生徒に「だから何?」って言われる問題は出しちゃいけないと。
ん?じゃあ用語削減に賛成なんじゃないの?と思われるかもしれませんよね。
いいえ、だからといって教科書から用語を削減するのは違うだろうというのが私の考えです。
先程も書きましたが、もうすでに入試には教科書に載っていないような用語集の①クラスや、用語集にすら載っていない知識が問われているのです。教科書から用語を削ったとしても教科書外から出題すれば良いだけ。
そういう意味で今回の提言は完全に現状を見誤っているとしか言いようがないと思うのです。
クイズのような試験を出す学校に合わせて、“単語を覚えさせるだけの授業が行われてしまっている現状”が悪いのであって坂本龍馬という単語が悪いわけではない。
歴史学者で東京大学教授の本郷和人氏は↑こうおっしゃています。
これはいつも思うんですけど、「暗記」という言葉の重さが人によって異なるということ。
テストで聞かれたら答えられるレベルを暗記と言う人もいれば、そうでない人もいる。そこに注意して暗記なんてダメだとか、暗記は重要だとかって議論してもダメだと思うんですよね。
特に我々は生徒に対してその辺はデリケートに扱わないといけないと思うのです。
知識とはなんぞや
ただ「知っている」ということと、「知識」として持っていることの根本的な違いは、理解を伴っているかどうかだと思うんですよね。
そういえばその昔、堀川高校探求科の入試問題でもこのような違いを尋ねる問題があったような・・・。問題を探すも見つからず…(^_^;)
用語が教科書に載っている事自体は決して”悪”ではありません。
私からすれば教科書は薄すぎてつまらない。もっと詳しく書いてほしいくらいです。
ただし、絶対にテストで細かな用語や年号は聞かないでね。それされるならもういらない(笑)
ですが今の教科書みたいな淡白な書き方では興味がわかない子っていると思うんですよね。
で、興味がわくとすれば先生の力しかない。
生徒に嫌いな科目と嫌いな先生を聴くと一致しすぎて面白い。
私も高校の時の日本史の先生の授業が面白かったおかげでやっぱり好きになった。
暗記が嫌いなので定期テストで良い点数はとれなかったが理解を伴う暗記を心がけたのはこの先生のおかげかもしれない。
歴史の裏側や歴史的な出来事のつながりを話してくれるのは楽しかったです。
だからこそ教科書がただの用語の羅列ではなくなって物語となってくれた感じ、とでも言いましょうか。
ちなみに↓こちらは塾には鉄板ですね。
このへんだと書いてある情報自体は教科書と変わらない(中学の教科書よりちょい詳しいかな)ですが、ビジュアルで歴史を捉えられるのでイメージしやすい。歴史を物語で捉えるにはもってこい。ぜひとも幼いところから読んで欲しい。もっというと、自分から読みたいと言って欲しい。昔この漫画の隅から隅までおぼえて中学受験で社会が得意になってしまった子がいました。小学校の教科書レベルよりも遥かに情報量が多いですからね。
読みたがる子にはどんどん読ますべきかと。ただしテスト前にこれを読み出す中学生はしばきます(笑)
私自身こうやって生徒には歴史なんかは出来る限り面白く伝えようとしています。
前にも書きましたが私の生徒で、テスト前に一番質問の多い科目が社会。みんな「わからないけど暗記する」のを止め、質問し理解して暗記する癖がついてきたのはとても良いことだと思います。質問対応するのはめちゃくちゃしんどいですけどね。興味があることに対しては人間は自然と細かな情報が欲しくなる。
そして覚えようと思っていなくても、自然と身についてしまう。
そうやって理解をともなって「知識」をしっかり身につけた人を、敬意を込めてこう呼ぶのです。
オタク
ね、見た目はそんなに変わらないでしょ(変わらないとは笑)
現在の教育界の「子どもの好きなものをとことん伸ばすべし」という傾向も、オタクをたくさん生み出そうというムーブメントにほかならないと思います。
なぜオタクはその道を極めてしまうのか。
簡単なことです。
対象が好きなものだから自然と接触機会が増えると同時に、より能動的に接触するので自然と理解したうえで知識を得る事になります。
そしてその知識を様々な場面で何度も何度も使いこなすからこそ、本当の意味で知識を自分のもの(内部化)とすることが出来る。
こうなると、「知識なんてネットで検索すればすぐにでてくる」とか言ってしまう人間とは歴然とした差を生み出すことが可能となるわけです。
こういう意味では暗記が役に立たないというのは見当違いも甚だしい。
私が暗記が嫌いだというとき、それは…
興味を持つことの先にあるもの
例えば、私の世代ならやったことがある人も多いこのゲーム。
「信長の野望」「三国志」の2つですね。
私はこれらを教育的ゲーム(教育上ポジティブ面があるから、「お母さん、お願いだからもうちょっとやらせて」と子どもが言い訳できるかもしれない奇跡のゲームw)と呼んでいます。
別にゲームをやれと言っているわけではありません。
(注)自己管理が出来ない子どもが、このゲームをやりはじめると24時間くらい平気でやり続ける事が可能な危険なゲームです。取扱には十分ご注意下さいw
このゲームの良し悪しは置いておいて、これをやっていると自然と何百という武将に興味が出るのです。
その武将はテストでは何の役にも立ちません。しかしおかげで、それがきっかけで何冊も歴史小説、歴史漫画を読みましたし、三国志に関しては中学時に北方 謙三「三国志」全巻読破しました。
戦国時代も司馬遼太郎先生の作品をはじめ色々読みました。
授業でさらっと通り過ぎたところにこんなにもドラマが。そう思うとたまらないんですよ。
塾が漫画を勧めると嫌な顔をされますが気にしません。めちゃめちゃオススメはこちら。
ここで覚えた99%の人物名が入試には出ません。受験では何の訳にも立ちません。
信長の3段構えの歴史的な考察がどうのこうの言っても仕方ありません。
ですが、あの教科書でおぼえると何も面白くない桶狭間や長篠にあんなドラマがあったなんて・・・。
教科書でみたあの家康の肖像画にこんなドラマがあったなんて・・・。(詳しくは自分で調べてみてね)と思うとワクワクがとまりません。
こうなると、自然と覚えてしまいます。覚えたくなるんです。興味のあるものは。
それが入試に関係あるかどうかではなく、あくまで興味の先に知識があるのです。
いや、もしかしたら入試にも良い影響があるかもしれません。
例えば中国史。三国志と出会わなければ絶対に興味が湧くはずがないであろう中国の風土や文化、地名などに(たとえそれがゲームのなかだとしても)も触れることになります。
たとえそれがめちゃくちゃ浅い知識だとしてもきっかけには十分です。
で、全く関係のない中国史に興味が湧く。➡他の時代も理解できるようになり知識を備えるようになる。➡中国史がやたら強くなる。
こんな好循環を生むこともあるんです。
受験勉強が役に立たないと言われるのは全て「興味のないものをやらされている感」から。
にもかかわらず坂本龍馬を消し去ってどうする?
これが私が教科書から用語を削減してほしくない理由です。
なんで暗記が大変だからという理由で削減やねんと。なんのために勉強してるねんという話です。
必修科目化」について
一応最後にちょっとだけ。
新学習指導要領の注目ポイントです。私的には評価しています。(上から目線)
海外へ出ようが、日本国内で平穏無事に暮らそうが、文系だろうが、理系だろうが、日本史を学んでいないのはまずいと思います。
日本は国民主権の民主主義国家なので、最低限の知識は持っておかないとね。
愛国心がどうとかまでは突っ込みませんが、自らのルーツを知ることはアイデンティティーの形成には不可欠かと。そして何よりリテラシーを養わないといけない。
ご近所の国のようなやり方が正しいかどうかは別にしてやはり国家運営としても大事なことなのではないでしょうか。と同時に悪用されないよう防衛する能力も身に着けないといけないと思います。
ということでこれから理系も文系も日本史を学びます。
日本史が入試でも必須科目に指定されるかもしれませんが、それ以上に必要になると
私が予想しているのは面接。
教養として尋ねるにはピッタリの科目ですから。
「あなたはこの○○事件の背景にはどのような思想がかくされているとおもいますか?」的な。
これだと変な暗記は必要ないし、新学習指導要領のアクティブラーニングにはぴったりですね。
これまで私より数学ができないような理系の人に「社会なんて暗記だけでしょ?文系って楽よね」な~んてたくさん言われて生きてきました。正直、無性に腹が立ちます。
そんなことを言っちゃう輩は、せいぜいこれから日本史という教養を備えた若い後輩から日本史の話題を振られ、「先輩教養ないっすよねwwwマジドン引きっす」とか言われて、あたふたすればいいわ!
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