
どうも、そいる塾長です。このたび育星舎グループで「iシステム」という塾運営システムが始まりました。グループの公式サイトでは“会社の取り組み”として紹介していますが、ここSOILのブログでは、もう少し個人的な話をさせてください。
なぜ、私が自分でシステムを作ったのか
育星舎を事業承継したのが3年前。当時、こんな記事で「実際私自身も業務が増えるように思われますが、育星舎には専任の事務員や顧問税理士の先生などもいらっしゃるため、逆にこれまでこなしていた雑務からは多少解放される見込みです。」なんて書いていたのですが、完全に見通しが甘かった。
正直に言うと、着任時点で会社には経営の仕組みもシステムも何もなかった。すべてが属人的。担当者以外は誰も知らないのが当たり前。なんなら担当者が誰なのかすらわからない。お互いにどうなっているのかわからない、本当にバラバラな各部門。
それでも会社は回っていた。しかし数字は見えないし、あまりにブラックボックスとリスクだらけで、新米経営者の私は何から手を付けていいのかわからなかった。
サッカーで言えば、個性豊かで力のある攻撃的なFWが個人技だけでなんとかしているチーム、というのが喩えとしてはわかりやすいかも。あとは、わからないことまでなんでも任されている万能マネージャーが1名。よく耐えていたと思います。
この話は長くなる(黒くなる笑)のでまた別の機会にするとして、私がまず作ろうとしたのはシステムではなく経営の仕組みでした。仕組みがないとシステムなんて作れない。何をどうやるのかわからないのにコードなんて書けない。AIであっても対応不能です。
監督として戦術を決めるという仕事。この3年は正直、GKとしてひたすらシュートを浴び続けるお仕事でしたが…。
変な喩えはこの辺にして、本題へ。
経理・会計・労務・法務・税務・事務、すべてを自分で把握できる仕組みを作る。これはもちろん私のため。事業承継から3年、ようやく仕組みができてくるとともに、経営の可視化が可能になりました。
そして、それをシステムに落とし込んだのがこの「iシステム」です。仕組みをシステムに落とし込むことで、本当の意味で、事務から属人性をひっぺがすことができる。
これにより次のフェーズ──作業はスタッフが行い、私は把握するだけという状況が作れます。すべての情報をシステムに集約し、誰でも操作方法が分かる、誰が操作しても同じ結果になるシステム。
これで私は煩雑な業務が減り、経営に集中できる。SOIL塾長との両立も負担が下がる。しかし最も大切なのは、作業をする社員・スタッフの負担が、とてつもなく軽くなることです。
塾の仕事には、授業以外にものすごい量の事務があります。請求、入金管理、書類、各種手続き、労務、経理…。そしてその多くが、担当者の経験と勘に頼った“属人的”なやり方で回っていました。
一番もったいないと思ったのは、先生たちの時間が、その事務に少しずつ奪われていくこと。本当なら、生徒一人ひとりに向き合う時間に使うべき時間です。そして何より、先生にとってその事務は、自ら望んでやっている仕事ではないということ。
育星舎の講師たちは、攻撃に優れたFWです。ドリブルで突破しシュートを決める点取り屋。そんな選手に守備をさせたらいかんな、と。守備から解放して、点を取ることに集中してもらう。
私が守備をするから、みんなは攻めてこい! そう言えるGKになると決めたのです。これが私の経営者としての矜持。(結局サッカーで喩えてますが…)
とはいえ私は、SOILではまだまだ現役のFWです。SOILスタッフが守備をしてくれて、優しいパスをくれるから得点できているだけなんですが。だからDFというよりMFかな(まだサッカーで喩える気か…)。
SOILは開校時に、“仕組み”として事務面をできる限り負担が軽くなるよう設計しています。だからこそ、私が育星舎の仕事をするようになった際にも、残業ゼロ・休日出勤ゼロの超ホワイト環境を約束しているスタッフに、SOILの事務をすべて任せることができました。
事務は大切な仕事です。しかし、事務を頑張っても生徒の成績は上がりません。だからといって、いい加減な事務では信用を失う。
システム化は、これまでもずっとやりたかった仕事でした。でも実現できなかった。理由は、私にシステムを開発する知識もなければ、そんな時間もなかったから。頑張って作っても、そのメンテナンスを誰がするのか。
この問題を解決してくれたのが、AIでした。
開発者は、私一人+AI

さて、ここからが「どうやって作ったか」の本番です。
私はエンジニアではありません。普通なら業者に頼むか、市販のシステムを買うところです。実際、コストをかけて色々試してみましたが、市販品は個性派ぞろいの育星舎各塾の“こだわり”には馴染みませんでした。
そこで、AIを相棒にして、自分で作ることにしたのです。
GWも返上し、毎日業務終わりの深夜0時から朝まで、PC画面にへばりつきました。自分の思ったものが形になっていく。正直、シミュレーションゲームをやっている感覚。楽しくて終わりどころが見つからず、毎日寝不足になりました。
しかし、何度も何度も躓きました。何度もAIと大喧嘩しました。「何度同じことを繰り返せば気が済むんだ(怒)!」と打つと、「8回目です。大変申し訳ございません」とAIが答えて、爆笑したことも。
結論から言うと、「AIを使えばだれでも簡単にこんなシステムが作れますよ!」というのは、真っ赤な嘘です。
大切なのは設計。“仕組み”をしっかり作っておかないと、システム開発は不可能だったと思います。自画自賛するわけではありませんが、私は仕組みの設計が得意だからこそできたのだと思う。何度もAIの提案の問題点を指摘し、別案を提示した。一緒に考えた、という方が近い。
そして、現場を把握しているからこそ作り込めました。
リリース後はスタッフに協力を求め、現場で実際に使ってもらい、「ここが不便」と感じたところをシステム内で共有。私が判断をしてAIが対応し、その日のうちに直していく。市販品では絶対にできない作り方でした。自分が現場を一番分かっているからこそ、そしてブラックボックスだった各スタッフの“属人性”をシステムで明確化して取り込むことで作れたシステムだと思っています。
スタッフには同時に、バグ・エラーのチェックも依頼しました。ひどいときには一日20件ほどのエラーに対応。プロが作った既製品ではありえないことで迷惑をかけましたが、このやり方こそ、私の開発で最も成功した部分です。間接的に、同じAIを使って全スタッフで一緒に作っていっている感覚でした。
会社の「仕組み」そのものが整った

地味ですが、ここが一番効きました。
狙い通り、システムが整うとともに、“仕組み”がしっかりと浮かび上がってきました。
経理・税務・法務・労務・広報――これまで完全に人力で、属人的だった会社のあらゆる業務が、システムに落とし込む過程で“整理”された。結果として、iシステムというより、会社の仕組みそのものが、一段ちゃんとしたものになりました。
いくら仕組みが整い、ルールを明文化しても、それを人がやるときには差異が出る。抜けが出る。でも、システムにはそれがない。
各種契約・経費精算・給与計算、どれをとってもシステム上で作業ルートが一つ、ダイレクト。2回以上同じ情報を入力する必要がないし、揺れも出ない。業務に抜けがなく、これまでかけていた業務時間のコストの1/3は確実に減ります。
なお、SOILが今回初めて給与計算を新システムで行いました。そもそも“仕組み”がシンプルで業務負担が少ないSOILですが、それでもスタッフの給与計算には30分はかけていた。これが3分になりました。「何もすることがないんですが、給与を確定しちゃっていいですか?」と。3分は、間違いがないかの確認。だから実質的には0分です。

何が変わったか――SOILでいろいろな機能を先行して始めています

実際に何が変わったか、実物をお見せします。
例えばiシステムの「保護者ポータル」。まずSOILで先行して使い始めています。
面談予約も、成績の確認も、請求書のダウンロードも、すべてアプリの中で完結する。保護者の方からは「紙のやり取りがなくなって楽になった」と声をいただいています。

模試の申込も、保護者ポータルから実際にやってもらいました。申込から請求まで直通。年間授業料が固定のSOILでは、なかなかない都度請求ですが、これがスタッフは何もすることなく、負担ゼロに。もしこういうのが10個も20個もある塾だったら…どれくらい負担が軽くなるのか。

また、個別指導の講習時のコマ割り。私が自分で教室事務をやる中で、最も大変で忌み嫌っていた仕事です。今はスタッフに任せていましたが、スタッフにとっても地獄の作業で、システムへの実装を熱望されていました。コマ割りは属人性が強い作業なので設計は難しく大変でしたが、こちらもギリギリ完成。
保護者ポータルから受講可能日時を、スタッフポータルから指導可能日時を提出してもらい、システム上で…(ここらは企業秘密)。これで、予定表の紙を何十枚も机に並べ、解けないパズルを解く作業がだいぶ楽になります。最も怖いダブルブッキングや登録ミスもないし、コマ数を数える必要もない。やったことがある人にしかわからないでしょうが、これ、本当に楽になる。
コマ割りなんてAIに任せれば一瞬で終わります。でも、私はそれだけはやりたくない。「コマ割りは属人性が強い」と書きましたが、これは生徒の性格や必要な指導内容を把握し、講師との相性を一人ひとり、一コマ一コマ考えていく作業。こういう属人性は、排除したくないのです。
今は私自身、このシステム開発でPCに向かう時間が増えています。でも開発が落ち着けば、管理はAIに任せ、生徒と保護者に向き合える時間を増やすことができる。これが、夏期講習までに睡眠時間を削ってまでやりたかった理由です。
私が、塾長として大切にしていること
システムの話をしてきましたが、私が一番伝えたいのは、逆のことです。
塾は、最後は「人」です。
今日の表情がいつもと違うことに気づく。つまずきに寄り添う。進路を一緒に悩む。そして、ちょっとした成長や成功をともに喜ぶ。こういう人にしかできないことにこそ、私たちの時間は使われるべきだと思っています。システムは、そのための時間を生むための道具にすぎません。
塾は、人が創る。
多角展開・コストカットのため、マンパワーを極力必要としない学習塾が増える今。
逆行するように「塾は人が創る」理念を守って40年。京都の私塾界を支えてきた、育星舎グループ。塾長の個性、そして講師と生徒の関係こそが、ひとつの教室を創る。
生徒ひとりひとりに講師が寄り添い、生徒との対話で授業が進む。
そんな「場」だからこそ生まれる「熱」。
この熱こそ、子どもの心を動かすエネルギー。
これが、私が定めた育星舎グループの理念です。
大手にはできない、一人ひとりに向き合う塾を。事務からは属人性を排除し、その分、教務では個性派塾長たちの属人性を最大限に発揮してもらう。これが、塾長の個性を最も大切にする育星舎の矜持です。
同じ箱を用意し、均一化と標準化で“水平方向”への拡大を目指す大手とは、明確に違う。私たちは、地域に深く根ざし、“垂直方向”へと深化していく。
AIはすごい。数年前には想像もできなかったことができるようになっている。しかし使ってみてわかったのは、使う人の能力次第だということ。
質問には、いつ何時でも答えてくれる。でも、AIにはまだ教育は無理です。使い手が答えだけを求めれば、答えを与える。それは教育ではない。「今日の表情がいつもと違うことに気づく。つまずきに寄り添う。進路を一緒に悩む。そして、ちょっとした成長や成功をともに喜ぶ」──少なくとも、これはできない。
だから育星舎は、AIにできないことをやるために、垂直方向へ伸ばすのです。
これから
iシステムは、これからも私の手で進化し続けます。各部門の現場の声、会員の声を、そのまま機能にしていく。
塾の未来は、きっと「人 × テクノロジー」だと思っています。その両方を、自分の手で握っていたい。だから私は、これからも作り続けます。ま、これからもまだまだ遊べそうな、本格的シミュレーションゲームです。寝不足にだけはならないように気を付けます。
iシステムの全体像や、会社としての取り組みは、育星舎グループの公式記事でもまとめています。あわせてどうぞ。

今日はこの辺で。

