どうも、そいる塾長です。
よくある面談風景
お母さん、教室からの講習のご案内はご覧いただけましたか?
え、そんなの家に届いていませんよ!?
こないだの授業時にのび太くんにお渡ししましたが…。
あ・・・(ゴソゴソ・・・)これ?
あ…^^;
すみません、先生、この子何にも私に渡さないので、これからは家に送っていただけます?
この生徒(名前をのびた君としましょう。他意はありません。)にプリントを渡すと必ずそのまま“裸”のプリントをかばんに押し込もうとします。
そしてそのプリントはカバンの底でくしゃくしゃになって眠り続けるということです。
しかしのび太はプリントがランドセルの底でくしゃくしゃになることなんて気にしません。だってその時点ですでに取り出すつもりがないのですから。
それにしてもいつからでしょう?
こういった学習の土台となる部分、しかもその中でも基礎中の基礎、もはや生活習慣ともいえる能力は確実に家庭内教育に問題があります。
私がこの面談で一番引っかかるのは最後のママの一言。
これこそがのび太の成長を阻む最大の阻害要因ではないかというお話です。
ちなみにこういった直接的な学力(IQ)ではなく内面的な能力として今「非認知能力」が幼児教育でも大きな注目を集めています。
非認知能力とは
詳しい説明はこういった記事にお任せするとして(笑)、IQと対置される能力ですね。
非認知能力の育成にもっとも重要なのが家庭内教育と言われています。すべての教育の最初にやるべきこと。いや教育を行う前にやっておかなければいけない教育です。
そこへの不安を煽るように今幼児教育ではこの非認知能力が声高に叫ばれています。が、しかしやはりこの非認知能力は重要。幼少期の習い事はその技能を身に着ける以上にこの非認知能力を鍛えるためのものと考えるべきで、それを可能とする習い事を選択すべきではないかと私も考えています。
小学生にはどんどんやりたいことを自由にやらせるべきだというお話もやはりこの非認知能力につながってきます。
身に着けるべき理想のタイミングは遅くとも小学4年になるまで。
この時期こそ、自己管理能力が身につき始めた子とそうでない子が大きな学力差を生み出してしまうタイミング。
非認知能力にも様々な要素があり各パラメーターの割り振りは人によってさまざまなのは当然ですが、こういった非認知能力こそが学習の土台となるのは疑いの余地はありません。
最近、難関私立中学を目指す子のなかにもこの非認知能力の欠如した子を多く見かけます。総じて学力が低く塾のクラスの授業についていくので精一杯、いや、ついていけていない。しかしそういった親御さんほど学力面にしか目が言っていないのが現実。
個別指導塾や家庭教師の力で学力をフォローしようと動きますが、本当の問題はそこではないんじゃないのか、という視点も持つべきではないでしょうか。気になるのはお子さんの特性が見えていないこと。
親御さんも高学歴で勉強に対しての理解はあり教育熱心ではあるものの、お子さんについてお話しすると何かズレを感じる。
過保護でも放置でもダメ。しっかりと子どもたちに今何をすることが必要かを教えていくためにはもっと普段からの対話が必要ではないでしょうか。
のび太は残念ながらこの時点でその土台部分が全く完成しないまま成長します。このくしゃくしゃのプリントはランドセルから塾用のリュックへ引き継がれた負の遺産だといえるでしょう。
ルール設定の重要性
ではのび太のママはどうすればよかったのか。
本来そんなに難しく考える必要はないのです。難しく考えてしまう人ほど最初の「ルール設定」で間違えてしまう。
例えばこのプリント管理。子どもに「学校から貰ったプリントをちゃんとお母さんに渡しなさい」とどんなお母さんでも一度は言うでしょう。これがルール設定です。
どんな子どもでも、どんなお母さんでも出来ることです。しかしA君のお母さんはここで失敗した。
A君は学校からもらった大切なプリントをくしゃくしゃの状態でランドセルに突っ込み、しかも親に渡すのを忘れてしまった。学校からの電話で気がついたお母さんはA君のランドセルの底に眠っていたプリントを発見し当然ながら叱ることになります。
ちゃんとプリントを渡しなさいっていったでしょう!
お母さんの設定したルールは「学校で渡されたプリントはちゃんとお母さんに渡す」です。そのルールをのび太が守らなかったということですね。
ですが目的を示すだけで手段は与えない。だからのび太は次も忘れる。そして次第にのび太のママはあきらめるわけです。
子どもが失敗することは何も悪いことではありません。この失敗こそが成功体験の源なのですから。この時失敗してはいけないのはお母さんだったのです。
のび太のママはここでのび太がちゃんとプリントをママに渡せるようになることよりも、確実にプリントが伝えたい内容を自分の元に届くようにする方法をとります。
カバンの底に眠るプリントの件でも、せっかくのび太の成功体験のビッグチャンスだったのにそれをみすみす潰してしまったのです。まるで先程の面談のときのように。
ぶれてしまう、それものび太のお母さん
今回のプリント管理の「目的」はのび太の「自己管理能力」の育成です。
学校からの大切な連絡を保護者が知るため。確かにこれが本来の目的かもしれません。ですがこれを本当の目的とするなら今どきプリントで生徒に配布なんて手段をとっている大人たちがアホすぎるわけです。
LINEで送ったらおしまいでしょう。既読マークがつきますし確実に何の労力もなく時間差もなく遅れるわけです。それを自己管理能力が未熟な小学低学年の子どもたちに託すとしたらそれはシステムがおかしいわけです。
それでも私は必ず子どもたちにこのタスクを与えるべきだと考えるのはそれも教育だと思うからです。
これはプリント管理で終わる話ではないのです。「自己管理能力」をはじめとする非認知能力はこれから子どもが取り組まなければならなくなるであろう宿題やテスト勉強、部活の練習からはたまた社会生活と様々な場面で必要となります。
となると「お母さんや先生が今回の件をふまえて次回からこういったトラブルが発生しないようにするにはどうするべきか」という大人が持ち出しそうな話は意味がありません。
これはお母さんのほうが、子供の成功体験という本来の「目的」を忘れてしまったあげく、お母さん自身の「目的」を達成しようとすることにほかなりません。
これは子どもがよくやってしまう「目的のすり替え」です。
お母さんのほうがこの「目的のすり替え」をしてしまうと困った事態が発生します。子どもが「目的」を達成するため、つまり成功体験を積むために“叱”るのではなく、自分に迷惑をかけていることに対して“怒る”ようになってしまう。
子どもが失敗しても“怒”ってはいけません。“怒”ることは“叱”ることとは違って「目的意識」が伴いません。だから子どもにはなぜ“怒”っているのか理解できません。お母さんの都合など幼い子どもにわかるはずがありませんから。
そしてこれが積み重なると子どもは何が何だか分からないまま自分が否定されているように感じ「自己肯定」ができなくなります。
「成功体験」を作らず「自己肯定感」が生み出されないと子どもは自信を持つことが出来ません。自信を失った子どもは、家庭内教育の本来の「目的」を見失い、ついには怒られないことを「目的」とし始めます。
そして子どものほうで「目的のすり替え」がおきると、ルールを守ることによって親からの承認を得るのではなく、ルール自体を変更してしまい承認を得られなくても親から否定される危険を回避しようと企てはじめます。言い訳という名のルール変更要求です。
- 「あとでやる…」
- 「今日はしんどいからできない…」
- 「僕には才能がない…」
子どもの要求に屈してルールを捻じ曲げたり、妥協してルールを取り下げてしまってはいけません。子どもが何もしていない、つまりまだ何も成功してはいないのに、勝手に親が決めたルールを取り下げることで子どもの思い通りの結果を与えてしまう。
「自分が変わらずとも世界のほうが変わる」という「歪な成功体験」は子どもをおかしな方向へ導きます。
能動的に世界を動かすのではなく世界が変わるのを待つという受け身な姿勢。
受け身で誰かが何かをしてくれるのを彼らはいつも待っているんです。
こうして、のび太のお母さんの言う「できない子」が生み出されるわけです。
のび太を生み出す最大の原因は、成功体験の喪失と、この歪な成功体験と言えるでしょう。
では具体的にどうするべきか
子どもは毎日ルール変更ができないかと模索し交渉してきます。
これが努力することを回避するための交渉であれば絶対に応じてはいけません。
大切なのは親の継続性。子どもを思うのであればできないことにイライラせずじっくりと子供と向き合っていく必要があります。
毎度、毎度怒らずにしっかりと叱る。わかっていてもなかなか出来ることではありません。だからこそルールの設定は慎重に。ハードルを最初から高く設定しすぎて、子どもが達成できないようにしてしまっては継続していくのは子供だけでなく親のほうが大変です。
だいそれたルールはいりません。しかしルール設定にはちょっとコツがあります。ルールが子どもにとって達成しやすく親が承認しやすいものであることが大切。そのために5W1Hを常に意識してルール設定を行いましょう。
発達障害がある場合はもちろん、こういったタスクが苦手な場合、このルールを紙に書いて掲示してみましょう。なお100円均一で変える黒板に書くとオシャレ(笑)
こうすることでルールとして認識しやすくなります。これは子どもにとってだけでなく親にとっても同じこと。親がルールを認識していないほどおかしなことはありませんからね。
ルールは具体的に。そして必ず目的を子どもと共有。そしてシンプルに。あくまで最終的には子どもが自分で必要だと考えて親にプリントを渡すことです。そこを間違えてはいけない。
誰かがやってくれるのを待つのではなく、自分で考えて自分で動く能力の育成です。
そのためにもまずは成功できるものを。成功体験で自己肯定させてあげるチャンスをたくさん作ってあげましょう。
親の仕事は、プリントをクリアファイルから抜き、学校に持っていくものは再度クリアファイルへ。もちろんランドセルにプリントが残っていないかチェック。それでも時間は約5分。どんなに忙しいお母さんでも出来ます。スマホを見ている時間があれば出来ることです。
今回ののび太のように中学になって学力面で問題が出てきてからの対処ではやはり難しい。できないことはないですが、そこの問題が片付くまで学力は周囲の子のように伸びません。できる限り早い方が当然入りやすいのは言うまでもありません。
面倒なお子さんのプリント管理。親がやるのでも子ども任せでもなく、一緒にルールと目的を共有して取り組む。これが塾に通わせるより習い事に通わせるよりも大切な非認知能力の育成のための家庭教育だと考えれば楽しくはならなくても有意義な時間になるのではないでしょうか。
中学生だからあきらめろと言っているわけではありません。逆に中学生のほうが自分で理解すると大きく変化する可能性を秘めているような気がします。
特に私が多く感じるのは塾で勉強の楽しさを知った子どもたち。彼らは学力の向上とともに遅刻が減り、忘れものが減り、こういったプリント管理の意識も高くなります。幼少期に確立できなければプリント管理は一生できませんなんて馬鹿な話はないでしょう。
ただ、鶏が先か卵が先かという問題としてどうしても学力の向上のため勉強に集中することを妨げる阻害要因になることが多い。だからこそ塾ではこの阻害要因を取り除いていきたいのです。
ですがそれにはご家庭の協力は不可欠です。
塾に遅刻した生徒がこんなことを言っていました。
2階で遊んでたらお母さんが塾の時間だと言いに来なかった。
こんなことにだけはならないように。過保護でもなく放置でもなく。自分で動ける子を一緒に育てていきましょう!
今日はこのへんで。