このシリーズでは「暗記の達人」への道というタイトルで、単純暗記ではなく理解して暗記するという事にこだわった暗記法のお話をして参ります。
保護者さんはまずこの前回の記事からお読みください。
英単語ってどうやって暗記するの?
そこをしっかり意識してください。
そしてもちろんあなたが暗記できると信じること。そして暗記したいと思うことが何よりも大切です。
それを忘れずに読んでくださいね。
1.英単語の文字と音の関係を知る
英語が苦手な人からすすれば「発音」というと難しく捉えがち。そりゃネイティブの発音をしっかり聞いて発音できればそれで良し。
できれば発音記号をしっかりと読めるようにしてほしい。
そんなに難しいこっちゃないので、そんなに小学校の早い時期から英語やらせるならこれくらい覚えさせる時間があるだろうに。
とりあえず英語の歌を歌う時間を発音記号にまわしましょうよ。
発音記号はこちらを参考に↓
全部完璧に覚えられなくてもこういった表を生徒に持たせておくことで辞書を引くたびに確認すれば良い話でね。
今は便利な時代で、スマホアプリで音声聞けたりするので発音記号なんていらないという意見もあろうとは思いますが、発音の違いを記号で認識できるのとできないのとでは理解のスピードが違うのです。
お馬鹿な先生だと発音記号のテストとかしちゃうわけですが、そういうことをいってるんじゃないんですよ。
発音記号はあくまでツール(手段)であって目的ではないんです。
不慣れな方からすると一見難しそうに見えますが、実は知っているとめちゃめちゃ便利なツールです。
今高3生で発音問題が嫌いな生徒が非常に多いのです。おかしくないですか?我々の時代よりもコミュニケーション重視、つまり音重視の教育を受けてきた”はず”の世代が発音問題が解けないって…。
これは中学での英語の入り口で発音記号に触れたかどうかだと思います。
発音記号を覚えているかどうかではなく、音の違いを認識できているかどうかという意味で。
なんとなくという感覚で捉えるのがベストなんですが、そこに記号(名前)を与えて認知するということは一見やることが増えて面倒くさく感じるかもしれませんが、実は理解しやすくなり習得の効率は上がります。
英文法をしっかり理解しながら英語を指導したいのもこのためです。
SOILでは小学部から徹底してここを叩き込みます。
しかし現在進行系の英語嫌いがそんなちゃんとした勉強をするはずないので、とりあえずは「カタカナ読み」でもいいのでとりあえず「読む」ことからはじめましょう。
大切なのは音を意識するということ。
英単語という記号の持つ「意味」はまず音につなげます。そして音からスペルという形(イメージ)を導くように暗記するということです。
意味 ⇔ 音 ⇔ スペル
こんな感じです。
文字から音を拾う練習
フォニックスを学ぶ
私は絶対に英語を初めて教える場合、英単語から当然教えるわけですが、その際最初からこのフォニックスのお話をします。フォニックスとは言いませんが。
フォニックスの一覧を見せてしまうとこれ全部暗記するのかと思われてドン引きされるのが嫌だからです。
フォニックスとは英語のスペルと発音との関係を明示したもの。↓を参考にしてください。
ただ最初はこれまた発音記号と同じで、フォニックスを完全マスターする必要はなく、音とスペルには関係があるんだということを知ってもらい、後の英単語の暗記の際に音から入るようにしてもらえればよいです。
フォニックスを意識しながら単語の暗記を繰り返していくことで、自然と音と文字がつながるようになり、おぼえやすく、そして忘れにくくなるのです。
この能力は当然一生ついて回ります。勘の良い子はフォニックスなど知らずとも自然と単語の暗記のなかでこの英語特有の音と綴の関係性に気づきパターン化(フォニックスもどき)して暗記します。
ちなみに私もそうでした。フォニックスなんて用語は大人になるまで知りませんでしたがいつからか自然とこの関係性に気づいていました。だからそれほど英単語のスペルを暗記するのに困ったことはありませんでした。
少なくとも中学生の間は…(高校は聞かないで…涙)
要は英単語が暗記できなくて困っている子の多くはこのことに気づかず、漢字を暗記するようにスペル(形)と意味を1対1で結びつけようとするため、頭に残らないという場合があるということなのです。
ローマ字の効用
わたしはローマ字も大切だと考えます。
ローマ字と英語のスペルのルール、つまりフォニックスは別物というのは言うまではないのですが子音と母音の組み合わせで音を作るという日本語にはない仕組みに慣れることは重要です。
まずはローマ字読みをしてみて、そこから英語特有の文字と音の関係(ローマ字とは違う点)に慣れていけば良いと思います。
文字の並び方や形ではなく一文字一文字(もしくは文字と文字の組み合わせで)音を捉えていくのです。
① ペン - pen
これはローマ字のまんまですね。このような場合はpenが「ペン」と読めればすぐに綴りが書けるはずです。
② 鉛筆 - pencil
しかしペンシルになると「シル」の部分がsiluとかsiruではないのでおぼえにくくなります。
そこでこの単語をおぼえる時に重要となるのが「 cil 」というつづりで「シル」と読む、ということをおぼえるということになります。
まずは [c]という文字がサ行の音を表す子音であることを暗記しましょう。そうすればローマ字読みで[ci]で「シ」と読むのはわかると思います。
もちろん「c」には色んな音があります。「dance」「cheese」「kick」・・・。
これで英語が嫌いになるんですよね。しかし・・・。
暗記の基本は原則と例外を知ること。
最初はイライラするかもしれませんがこの音の例外だけをしっかり暗記していくと、これら例外にも規則があることがわかってきます。
「ce」「ch」「ck」それぞれの文字の組み合わせの音が暗記できれば、この文字群を使う他の単語が楽に暗記できるようになります。
その規則が積み重なっていくとだんだんローマ字読みから脱して英語を読めるように変化していくのです。
もちろん最初からフォニックスを叩き込んでいればこんな面倒な作業はいらないとも思いますがルールが単純なローマ字のほうがとっつきやすいでしょうからね。
またPCのキーボード操作でローマ字入力は便利です。今の子どもたちが大人になる頃には消滅しているかもしれませんが(^_^;)
そういうのはおいておいても、こういったローマ字の規則外の文字と音の関係のバリエーションをたくさんおぼえると一気に英単語の暗記が楽になってくると思います。
では次になぜ[ l ]という「1文字」で「ル」と言う音になるのかです。
もちろん本当は「ル」ではありません。発音記号で表さなければ、日本語のカタカナでは本来表記できない音なのです。
これは先程お話した日本語と英語の文字の作られ方に違いが有るのです。
日本語と英語の音の作り方の違い
日本語の「ル」は1文字で表しますがローマ字では「lu」というように2文字で表します。この違いが、日本人が英語を発音する時に困ってしまう最大の原因です。実はローマ字では、日本語で言う「ル」という音を、2つの音の組み合わせとして表記します。
つまり「l」にも「u」にもそれぞれの音があると考えておりその組み合わせで「ル」という音をつくるイメージです。
下の図を見て下さい。
l | u |
ル |
日本語の「ル」の音には「u」の音つまり「ウ」の音が含まれています。
しかし英語やローマ字の[ l ]には「ウ」の音が含まれていません。
となると日本語には英語の「l」だけの発音が存在しないということがわかりますよね。
では「l」をどう読めばいいのかというと、日本語で「ル」という音を口に出す瞬間の音といえばわかりやすいでしょうか(「ウ」の音が出てくる前の音なのです。)
これが母音がない音、つまり子音だけの音です。
英語が聞き取りにくいのはこういった子音だけの音が聞き取りにくいためなのです。このように英語には日本語にない音がたくさんあります。
例えば「r」と「l」は日本人からするとどちらも「ル」ですが英語では全く違う「ル」なのです。※そもそも「ル」ではないことは先程お話したとおりです。
ちなみに「r」は舌を巻いて舌の先が口のどこにも当たらないようにすること、「l」は歯の裏に舌を当てた発音をします。ここまでくると英語が嫌いな人からすると嫌気が差すかもしれません。
今回は単語の暗記が苦手な人に向けてのお話なのでそこまでしっかり理解するのは後々でも良いでしょう。
大切なのはこれから英単語を暗記する際に日本語ーローマ字ー英語の音と文字の関係の違いを意識して、おぼえなければいけない文字をしっかり見つけてから暗記に取り掛かるということです。
英単語を見ながら日本語の意味が言えるようにする
単語の読み方がしっかり理解できたら次はその日本語の意味を暗記しましょう。名前を知らない人の顔をおぼえるのはとっても大変です。
同じように意味を言えない単語のつづりは暗記できるわけがないので、まずは英単語をみて発音してから意味が言えるようにする。
または音を聞いて単語の意味が言えるようにすることが重要です。
単語には複数の意味があったりしますが、上級編としてできるだけ単語をイメージ化するとたくさん覚えなくても良くなります。
単語をイメージ化するということ
詳しくは大学受験編の単語の暗記の仕方でも詳しくお話します。
今回は中学生の英語入門編ということなので、前置詞という語だけはかならずイメージ化しておくことを勧めておきます。
前置詞とは in , on , to ・・・等
単語テストで出してもらうとラッキーと思うようなスペルが簡単な単語が多いですが、この単語を辞書で調べてみてください。
びっくりしますよ。
「in」だけで3ページに渡って解説してくれちゃってます。辞書を引くってこういうことを知るためでもあるんですよね。
でも…え?これ全部暗記するの?となるかもしれません。確かに全て暗記しておいたほうが良いです。
しかしそんなに簡単じゃない(笑)
これからお話するイメージ化を用いれば多義語もシンプルな暗記で攻略できる場合が多くなります。
このような単語をどのようにおぼえればよいか見ていきましょう。
[ in ]
コアイメージ:内部
「~の中で」という日本語で覚える方が多いですが、これはその通りです。あえてイメージ化すると上図となります。
ただし先程書いたように辞書で調べると様々な意味を持つ単語だと言うことがわかります。例えば初期段階で理解しておかなければいけないのは「内部というのは空間だけでなく時間などの抽象的な概念の内部」も指すということでしょうかね。
[ on ]
コアイメージ:接触
「~の上で」という日本語で覚える(教える)方が多いですが、正しくは「接触」のイメージです。スイッチオンとかね。これを「~の上で」でイメージできます?できるわけ無いですよね(これは前置詞の用法ではありませんが)
なんか某映像授業のCMでこんな当たり前のことをドヤ顔で教えて”神授業”ってやっているの見て何かを悟りました(笑)
[from]
コアイメージ:起点
中学の教科書、学校の指導により「出身」という日本語で覚える方が多いですが、正しくは起点(スタート地点)のイメージです。
「出身」は国語力がしっかりしていない方だと「動詞」とか言い出す場合があり、記憶が薄まる中1の最後頃には「I from Kyoto.」とか書いてしまう可哀想な子を見かけるので、最初からちゃんと前置詞として認識できるような、今後様々な文章での使用に対応できるような形で理解しておきましょう。
[ to ]
コアイメージ:方向
「~へ」とか「~に」いう日本語で覚える方が多いですが、方向の→(矢印)のイメージでとりあえずは理解しておきましょう。
「I go to school.」のtoですが、「I go → school」としても意味が通じますよね。
こういった単語を英語=日本語の1対1で暗記すると全く使えない知識になってしまいます。
「公園にいる」の「に」と、「公園に行く」の「に」は国文法的にも異なる意味なのは言うまでもないですが、そんな難しく考えなくても、「に」という文字自体ではなく、そのイメージでとらえれば違いは誰だってわかると思います。
ちゃんとイメージ化することで、訳し方が変わっても対応できるようになります。
スペルをおぼえる
そして意味が言えるようになったらいよいよ単語のスペルを暗記していきましょう。その際よく「何度も書いておぼえましょう」と言われますが、間違ってもただひたすらに文字を書いても暗記できるわけではありません。
書いておぼえるときのポイントを説明します。
書道にならないようにする
「心を無にして文字を書く」では暗記になりません。
いくつ書いたかが大切ではなくおぼえやすくするために書いているということを意識しましょう。
そのため横に書いていく際は毎回テストするつもりで既に書いたものを隠しながら書いていきましょう。
中学の課題にありがちな何回書くかみたいなのは…。よろしくないですね。書くことが目的なりやすい。
宿題だから実際書かないといけないわけですが、私なら実際に書かない。指でエアー書きします。
もちろん指を動かすときは単語は見ないで書く。
そして指で何回か書いてみて覚えたなと思ったら、最後に1回だけ鉛筆で書いてみて正解と見比べて終了です。
あくまで書くことの目的は暗記であることを忘れずに。
② 音とつなげながら書いていく(音読)
これは最初に書いたことですね。
1文字1文字その文字がどういう音を構成しているのかしっかり意識しましょう。
音と文字の関係を意識するんです。そして大切なのは原則と例外をしっかり識別することです。
そうすることで単語のつづりを丸暗記するのではなく、文字を組み立てていくようにおぼえることが出来るので忘れにくくなります。
当然ブツブツ音読しながら指を動かすと良いでしょう。
そのとき単語全体の音を読んで書くのではなく、どの文字がどんな音なのかを意識して書くということが大切です。
③ 「ながら」勉強はしない
こういう単純な勉強はつまらなくて当然です。
しかし、だからといって音楽を聞きながら、またはテレビを見ながら暗記するなどもってのほかです。
自ら集中力を下げてどうするんですかということです。
こういうやり方はそれこそ一番書道になりやすい。音も意味も考えずただひたすら書くだけのトランス状態になりやすいです。
作業用BGMみたいに単語の暗記に集中できるなら良いのですが、音に集中して勉強時間が早く過ぎてくれるのが目的で音楽を聞いているならやめましょう。
私は個人的に音楽を聞きながらの勉強は暗記には向かないと思いますよ。
④. おぼえたかどうか必ずテストする
どんな科目であろうと「おぼえているか」「わかっているか」はしっかりテストで確認しましょう。自分でノートに即席テストを作ってみて確認したり、単語カードを作って確認したりしましょう。
その際書けなかったり、意味が言えなかった単語は次の日もその次の日も繰り返し確認していきましょう。
脳科学者エビングハウスの研究によると、人は記憶した情報を「20分後に42%、1時間後に56%、1日後に74%忘れる」という。これを忘却曲線といいます。
(※これも本当はそういう単純な話ではないそうなのですが…)
単語の暗記を進めて行くと当然、古い知識から消えていきます。しかしplayやthisと言った単語を忘れる人はいません。
なぜか?それは当然繰り返し使うことで忘却曲線をリセットして緩やかにしているのです。
短期記憶を長期記憶にするためには繰り返しが重要
つまり序盤は忘れても仕方がないくらいのつもりで、まず全体を暗記。そしてテスト。
完全に忘れきる前に、一度暗記した範囲を繰り返すようなスケジュールを組みましょう。そしてまたテストです。
できたら品詞を覚える
これが塾にでも通っていないとなかなか難しい。
せめて暗記しようとしている単語が、名詞・動詞・形容詞・副詞・その他くらいはしっかり違いを意識して暗記しましょう。
今回はこの点には触れませんがまたどこかで。
最後に・・・
勉強ができないと思っている人はだいたい「自分には記憶力がない」「勉強が出来る人は脳の作りが違う」という言い訳をしてしまいます。
もちろん英単語の暗記が困難な原因として「読字障害(ディスレクシア)」の可能性は否定しません。
しかし、もし漢字ならおぼえられるとか、数学は得意だけど・・・・と言った感じで、英語しかも英単語の暗記だけに問題を抱えているのであれば読字障害はないでしょう。
それにあなたは一体いくつの日本語をおぼえていますか?
おそらく万を超えるでしょう。
そして世界でも最も難しい言語の一つと言われる日本語を流暢に使いこなしているのはなぜですか?
中学生が学んでいる英語なんてアメリカの幼稚園児並。
そんなもの天才でなくても出来ますわな。いや、そう考えたほうが気が楽です。
ただ、普段から英語を使う機会が無いだけなのです。
日本で英語を使わなければいけない場面があまりに少ないため英語が苦手な人が多いだけです。
だから先生も英語が話せないw
そして今、教科書も学校の授業も、理解するという方向で言えば昔よりも遥かに難しくするような事になってしまっています。
だからこそ、効率よく、上手に英語を勉強しなければいけません。
これはどんな科目でも言えることです。
「頭がいい」と思われている人が当然のようにやっていることを「頭が悪い」と思いこんでいる人はやっていないだけなのです。
バットを逆さに持ってホームランが打てるわけがないのです。早く正しいバットの持ち方を知って素振りの練習をしましょう。
SOILではこういった正しい勉強法にこだわります。
どんな参考書がいいのかではなく、どうやって参考書を使うかが大切なのです。
正しい勉強法と、その勉強法を実践できる正しい姿勢(心構え)を指導したい。
学習障害はそれでも出来ない時に心配するとして、まずは自分の勉強のやり方が正しいか見直してみましょう。
実際発達障害があるという方でも、この正しい英単語の暗記法で、学校の単語テストが1割くらいの正答率から9割くらいに伸び子もいます。おそらく彼女の「障害」とされる部分がそこまで英単語の暗記には影響していなかったということでしょう。
しかし発達障害ゆえにこれまでの経験から暗記は苦手、英語なんて難しいからできないという思い込みがあったのは間違いありません。
この子に関してはここで自己肯定感を得られたのはその後の勉強には大きく影響したと思います。
あくまで成功例の一つに過ぎません。もちろん全ての人に有効であるとはいいませんので悪しからず。
英単語が嫌いな方。単語が暗記できるようになると英語はとても簡単な科目になります。是非挑戦してみて下さい。
本当の問題は勉強法を知らないことではなくて、その勉強法をする意味を考えることです。
これこそが先程書いた、勉強に取り組む正しい姿勢(心構え)です。
これだけは忘れずに英単語の暗記に取り組んでください。
今日はこのへんで。
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